死別を経験しますと一人悲しみにくれます。孤独や時には絶望さえも伴い辛く苦しく、場合により自責、罪障、そして恐怖にも似た不安などにも襲われます。
このような様々な「悲嘆」の反応は決して死別を経験したあなたにだけに特別起こっているわけではないのです。死別をきっかけに、一挙に収集が付かないほどの様々な感情がわき起こるために起こります。「心が張り裂けそう」「混乱しているような気がする」「塗炭の苦しみ/ 水火の苦しみ」などという訴えなども聞きます。なんとも辛い時間ですが、「悲嘆もいつか必ず癒されて、いつの日にか悲しみは終結へと向かいます。
人間は「生老病死」という宿命から免れることができない以上、いずれは「愛別離苦」という愛する人の死に遭遇します。配偶者、子供、両親、兄弟姉妹など、生きる時間を共有してきた大事な人を失うと、深い、どうしようもない悲しみに包まれます。
深い悲しみがストレッサーとなり、様々な不調をもたらします。
長期に渡る、「思慕」の情を核に、感情の麻痺、怒り、恐怖に似た不安を感じる、孤独、寂しさ、やるせなさ、罪悪感、自責感、無力感などが症状として表れます。まるで、自分自身の性格までもが変わってしまったのかと考える方もいますが、いずれ戻れます。
睡眠障害、食欲障害、体力の低下、健康感の低下、疲労感、頭痛、肩こり、めまい、動悸、胃腸不調、便秘、下痢、血圧の上昇、白髪の急増、自律神経失調症、体重減少、免疫機能低下などのため、持病が有る方は悪化しない注意が必要です。
ぼんやりする、涙があふれてくる、多くの「なぜ」「どうしよう」の答えを求められ、死別をきっかけとした反応性の「うつ」により引きこもる、落ち着きがなくなる、より動き回って仕事をしようとする、故人の所有物、ゆかりのものは一時回避したい思いにとらわれますが、時が経つにつれ、いとおしむようになるなど
以上のような症状はある一定期間ですが、混在して、それも時をかまわずして起こります。さらに困ったことには、きっかけさえあれば、何年か後に再発することもあるのです。恐らく、悲嘆という根の深い事柄だからこそなのでしょう。
悲嘆は4つの特徴的な経過を辿るとされてきました。
(1)ショック期、(2)喪失期、(3)閉じこもり期、(4)癒し・再生期がそれにあたります。最近の欧米での研究、筆者自身の日本での研究では、(1)については、異論はありませんが、喪失期、閉じこもり期、癒し・再生期と段階的に分けることは難しく、むしろこれらの反応は、重積しながら進んでいくと表現した方が適切ですし、当協会では研究と実践に基づき「天秤説」を唱えています。
筆者の研究によると日本人には特徴的な4つの死別の悲しみの反応があげられます。 (1)思慕・想起(引き込まれるようなそして噛みしめたい懐かしさ)、(2)疎外感、(3)うつ的な不調、(4)適応・対処の努力です。
悲嘆を癒し、様々な症状を軽くしたり抜け出すためには、充分に悲しみ、何らかの方法で悲しみを表出し、受け止める作業が必要です。そのため、信頼できる場での心の解放を目指す「悲嘆回復ワークショップ」では、悲しみを癒すためにワークショップを開催しています。ワークショップでは、協会独自のシートを準備しシステマティックに心の整理などを行っています。